気圧高度計の仕組み|QNHと標準気圧で表示が変わる理由
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Q1.気圧高度計が直接取り込んで、高度へ換算するものは?
答え:現在位置の静圧
気圧高度計は静圧と設定基準から高度を表示します。直下の地面までの距離を直接測ってはいません。
Q2.機体位置と静圧が変わらないまま、高度計の設定値を上げると指示高度は?
答え:上がる
設定値を上げると同じ静圧でも指示が上がります。基準が変わった結果で、機体が上昇したわけではありません。
この2問だけで理解全体や実技能力は判定できません。実際の運航判断には使わず、本文の前提・例外も確認してください。
標高300 ftの空港で、機体は駐機したまま。高度計にその空港のQNH空港の気圧から求める高度計の設定値。滑走路上で高度計がその標高を示すように規正するために使う。飛行中の表示が実際の高さと常に一致するとは限らない。を入れると約300 ftを示します。そこで設定を標準気圧に変えると、飛行機は一歩も動いていないのに表示が変わります。高度計を理解する入口は、この場面です。
高度計が受け取るのは周囲の静圧。気圧設定は、その圧力をどの基準からの「高さ」として表示するかを選ぶ操作です。この記事では計器の仕組みとQNH・標準気圧の意味を整理します。飛行中の切り替えは次の記事で扱います。
高度計は地面までの距離を測っていない
上空ほど、上に積み重なる空気が少なくなり、通常は気圧が低くなります。気圧高度計は機体の静圧孔から取り入れた圧力を使い、標準大気の「気圧と高度の関係」に沿って高度を表示します。機械式なら、周囲の圧力が下がると内部のアネロイドカプセルが膨らみ、指針を動かします。電子式でも、圧力を高度へ換算する点は同じです。
| 高度計に入るもの | 計器が行うこと | 画面・指針に出るもの |
|---|---|---|
| 現在位置の静圧 | 設定した基準を使い、標準大気の目盛で読み替える | その基準での指示高度 |
駐機したままQNHから標準気圧へ変えてみる
例として、標高300 ftの架空の空港で、現在のQNHを29.53 inHgとします。下の三つはすべて同じ機体、同じ場所、同じ瞬間です。
| 設定窓の値 | 高度計の表示 | 表示している意味 |
|---|---|---|
| その空港のQNH 29.53 inHg |
約300 ft | 空港の標高に対応する指示 |
| 標準気圧/STD 29.92 inHg(2992) |
約660 ft | 標準気圧を基準にした気圧高度 |
| その空港のQFE 約29.21 inHg |
約0 ft | QFEの基準面からの指示 |
QNH 29.53から標準気圧 29.92へ設定値を上げると、指示も上がります。変わったのは飛行機の高さではなく、圧力を読むための基準です。逆に設定値を下げれば、同じ静圧でも指示は下がります。
擬似高度計で、設定だけ動かしてみる
まずA空港とB空港を切り替えてください。標高300 ftのA空港では、地上で測る気圧は約29.21 inHg、QNHは29.53 inHg。標高0 ftのB空港では、地上で測る気圧とQNHがともに30.12 inHgです。BではQFEもQNHと同じ値になります。どちらも架空の例で、空港を切り替えると別の場面になります。
次に一つの空港を選んだまま、機体を駐機させてQNH・STD・QFEのボタンを操作してください。機体の位置と静圧は同じなのに、指示だけが変わります。最後に「気象条件」を動かし、設定ノブはそのままなのに地上の気圧・現在位置の静圧・指示が変わることを確かめてください。「機体の位置」を動かした場合とも比べられます。気象条件を自由に動かせるのは、この仮想教材だけです。
操作教材
A空港とB空港で、何が変わる?
空港・気象条件・機体の位置・高度計の設定をそれぞれ動かせます。気象条件を動かす操作だけは仮想空間での実験です。標準気圧は29.92 inHg(2992)です。
空港を切り替えると別の場面に移り、機体はその空港の地上、設定はその空港のQNHに戻ります。地上の気圧は空港の標高とその場所の気象条件で変わります。Bは標高0 ftなのでQNHとQFEが一致します。
機体の位置 海面から・モデル上
高度計の指示 設定で目盛が変わる
QNH設定
針は1周で1000 ft。正確な値は数字で確認してください。
気象の変化をシミュレートします。動かしても機体の位置と下の高度計の設定は変わりません。地上の気圧・機体が受ける静圧・指示高度の変化を見てください。
こちらを動かすと、機体の位置と静圧の両方が変わります。
QNHを設定すると、駐機中の高度計は空港の標高約300 ftを示します。
日本のQNH適用区域の例:14,000 ft未満はQNHでAltitudeとして扱います。
A空港で実際に測る地上の気圧:
その空港のQNH(海面基準へ換算):
機体が現在位置で受ける静圧:
変数の見方:空港を変えると標高と初期の気圧が変わります。気象条件を動かすと地上の気圧と現在位置の静圧が変わります。機体を動かしても静圧が変わります。高度計の設定ノブだけを動かすと静圧は同じまま指示高度が変わります。
14,000 ftの線は日本のQNH適用区域における規正切替を示します。QNH適用区域外の洋上では、14,000 ft未満でも標準気圧を使う扱いがあります。標準大気に沿った架空の学習モデルであり、温度・計器誤差や実運航手順は再現しません。
図の14,000 ft線は、日本のQNH適用区域で高度計をQNHから標準気圧へ切り替える境目です。この模型では標準大気を仮定しているため、気象条件に合ったQNHを設定した場合は機体の位置と指示を一致させています。現実の気温による高度誤差や計器誤差は再現していません。QNH適用区域外の洋上では、14,000 ft未満でも標準気圧を使う扱いがあるため、この線を全空域共通の境界と考えないでください。[7][8]
QNHは「この空港の標高が読める」設定
空港で測る気圧は、空港の標高とその日の天気の両方に左右されます。QNHは、空港の圧力を標準大気に沿って海面基準へ換算した設定値です。適切なQNHを高度計に入れると、その基準地点にいる機体は、おおむねその地点の標高を示します。先ほどの例なら約300 ftです。
ここでいう海面は、目の前の海水面を計器が探しているという意味ではありません。高度を読むための共通の基準面です。QNHで示す高度は、航空図や進入方式に書かれた海面基準の高度と対応します。ただし、QNHを正しく入れても、現実の大気が標準大気と違えば指示と実際の幾何学的な高さに差が残ります。特に低温時の差は別に考える必要があります。
標準気圧は「皆で同じ目盛を使う」設定
標準気圧の設定は29.92 inHg(2992、約1013.2 hPa)です。この値に設定すると、その場所のQNHが何であっても、同じ圧力面を同じ気圧高度標準気圧面を基準に、測定した気圧を標準大気の高度へ換算した値。高度計を29.92 inHgに規正して読み取り、航空機の性能計算などに用いる。として読めます。したがって標準気圧で示した約660 ftは、空港の標高でも、地面からの高さでもありません。

飛行中、標準気圧の目盛で表す高さをフライトレベル(FL)として使います。例えばFL200は標準気圧設定で20,000 ftを示す圧力面です。「海面から実際に20,000 ft」とは限りません。
QNEという語を見たら、まず文脈を確認する
FAAの用語集では、QNEを標準高度計設定に使う気圧、つまり29.92 inHgとして定義しています。一方、英国CAAのCAP 413では、標準気圧(約29.92 inHg)に設定した高度計が特定の場所・時刻の着陸時に示す値をQNEと呼びます。[5][6]
そのため、最初の理解では「設定する数値は標準気圧」「その設定で読む値は気圧高度/FL」と分けておくと混乱しません。QNEという略語だけで、設定値を指すのか着陸時の指示を指すのか決めつけず、使っている教材や手順の定義を確かめます。
三つの高さを混ぜない
標高300 ftの空港の上を、QNH設定の高度計で2300 ftと読んだとします。単純に空港の真上なら、空港の標高との差は約2000 ftです。しかし、地形が盛り上がっていれば、直下の地面までの距離はそれより短くなります。気圧高度計の「2300 ft」は直下の地形までの距離を教えてくれません。
| 言葉 | どこから測るか |
|---|---|
| 海面基準の高度 | 平均海面を基準にする。QNH設定の指示高度が対応する |
| 対地高度 | 機体の直下の地面や水面を基準にする |
| 気圧高度 | 標準気圧の基準で気圧を高度へ読み替える |
QFEを設定したときの「0 ft」も、QFEの基準面での0です。飛行中いつでも直下の地面まで0 ftになるという意味ではありません。
一分で確認
Q1:機体が止まったまま、設定を29.53から29.92 inHgへ上げたら?
A:指示高度が上がります。機体は上昇していません。
Q2:標高300 ftの空港で、適切なQNHを設定したら0 ft?
A:約300 ftです。QFEの基準面ならQFEで約0 ftを示します。
Q3:QNHを入れた高度計の表示は、直下の地面までの距離?
A:違います。海面基準の高度として読むための指示です。
次に読むなら:続編「高度計をいつ29.92に切り替える?」では、出発、上昇、巡航、降下、着陸でQNHと標準気圧をどう使い分けるかを一便として追います。
参考資料
- FAA Glider Flying Handbook, Chapter 4(静圧、アネロイド、指針の動き)
- FAA Pilot/Controller Glossary, A(altimeter setting)
- FAA Pilot/Controller Glossary, F(FLとQNH・QFE・標準気圧の関係)
- FAA AIP ENR 1.8(低温時の指示高度と真高度)
- FAA Pilot/Controller Glossary, Q(QFE・QNE・QNHの定義)
- UK CAA CAP 413, 6.69(QNEの別の用法)
- 国土交通省 航空従事者技能証明学科試験例題集、例題12(日本の14,000 ftでの切替)
- 国土交通省 航空従事者学科試験問題(QNH適用区域外の洋上での標準気圧)