地文航法・推測航法と航法ログ|予測を実績で更新する
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Q1.既知の位置から、方向・速度・風・経過時間で次の位置を予測するのは?
答え:推測航法
推測航法は位置を予測し、地文航法は地上の目標物と地図を照合して位置を確認します。
Q2.航法ログのETEとETAの違いは?
答え:ETEは所要時間、ETAは到着予定時刻
「10分」という時間の長さがETE、「10時10分」という時計の読みがETAです。
この2問だけで理解全体や実技能力は判定できません。実際の運航判断には使わず、本文の前提・例外も確認してください。
航法ログを丁寧に埋めても、飛行中に「この町が予定のチェックポイントだろう」と当てはめてしまえば、現在位置の確認にはなりません。地形で確かめる方法と、時間・速度から予測する方法を組み合わせることで、思い込みに気づく材料が増えます。
この記事の目標は、地文航法と推測航法の役割を説明し、航法ログを予測の一覧から更新可能な記録へ変えることです。架空の巡航区間を使ってGS/対地速度航空機が地表に対して移動する速さ。空気に対する真対気速度に風の影響が加わるため、同じ対気速度でも変わります。速度計が示す指示対気速度(IAS)とは異なる量です。と到着見込みを計算します。経路選定や位置不明時の実機チェックリストを代替するものではありません。
1.地文航法で確認し、推測航法で予測する
地文航法(pilotage)は、地上の目標物と地図を照合して位置を把握する方法です。推測航法(dead reckoning)は、既知の出発位置から方向、速度、風、経過時間を使って次の位置を予測する方法です。推測航法の計算には、風を考慮したヘディングとGSが含まれます。
例えば「この川の合流点を通過したので現在位置が分かった」が地文航法、「そこからGS 90 ktで8分なら12 NM進んだはず」が推測航法です。前者だけでは似た地形を取り違えるおそれがあり、後者だけでは風や操縦のずれが蓄積します。二つを照合すると、地形の候補が予定時刻や方向と合うかを確かめられます。
GNSSの移動地図が使えるときも、入力した経路が正しいか、表示された位置が周囲の地形と整合するかを確認する意味は残ります。一つの画面に異なる項目が出ていても、同じ位置情報源から作られている場合は、独立した裏付けが二つあるとは限りません。
2.チェックポイントは目立つだけで選ばない
選びやすいのは、形が特徴的な湖、川と主要道路の交点、海岸線の大きな曲がりなどです。ただし「大きな町」のような単独の特徴だけでは不十分な場合があります。「川が北側を流れ、鉄道が東側へ分岐する町」のように、複数の関係を組み合わせます。
- 地図上でも空からでも識別しやすいか。
- 似た特徴の別の地点と取り違えにくいか。
- 予定高度、視程、太陽の向き、季節でも見つけられるか。
- 経路の左右を確認できる大きな地形もあるか。
- 通過時刻を記録する「どの線を越えた時点か」が明確か。
山や川を経路の左右の目安にすることは有用ですが、それを越えてよい高度や空域を保証するものではありません。地図上で目立つ送電線や塔を、接近して確認しようとしてはいけません。目標物の発見よりも地形・障害物・交通との安全な間隔を優先します。
チェックポイントは増やせばよいわけでもありません。短い間隔で記入や照合が続くと、見張りと操縦の負担になります。一方、長すぎる間隔では誤差を見つけるのが遅れます。区間の複雑さ、視認性、速度、自分の訓練段階に合わせて教官と決めます。
確認のしかたも事前に決めておきます。例えば「橋そのものを真下に見た時刻」なのか、「橋を結ぶ線を機体が横切った時刻」なのかで記録が変わります。毎回違う位置で時計を読めば、風が一定でも区間GSがばらつきます。目標物を凝視して見張りが途切れないよう、記録は簡潔にします。
3.航法ログの各欄を役割で分ける
ログは用紙を完成させるためではなく、何を予測し、何を実測したかを分けるために使います。形式は訓練機関や運航者で異なりますが、次の区別があると見直しやすくなります。
区間・距離・方向
予報風・TAS・GS
区間時間・予定時刻
確認した目標物
実際の通過時刻
燃料・飛行状態
実測GS・ずれの理由
次の到着見込み
残りの計画の再評価
ETEは区間に要する予想時間、ETAは到着する予想時刻です。10分という長さと、10時10分という時計の読みを区別します。実際の通過時刻はATAなどの欄へ記録し、次のETAを更新しても、当初の予測を残せるようにします。
また、真コース・真ヘディング・磁気ヘディングを同じ「方位」の欄へ混在させないことが大切です。単位もNM、kt、分、燃料のLやUS galを明記します。ログの風計算を理解するには、まずTASとGSの違いを確認してください。
4.計算例:チェックポイントで到着予測を更新する
水平巡航中のA→B→Cを考えます。A→Bは18 NM、B→Cは24 NM。両区間とも計画GSは90 ktで、Aを10時00分に通過しました。旋回、上昇・降下、待機は含めません。
- A→Bの計画時間は18÷90×60=12分。BのETAは10時12分です。
- B→Cの計画時間は24÷90×60=16分。Cの当初ETAは10時28分です。
- 実際にはBを10時15分に通過しました。A→Bの実測GSは18÷(15÷60)=72 ktです。
- B→Cでも同じGSが続くと仮定すれば、残り時間は24÷72×60=20分。Cの新しいETAは10時35分です。
「Bで3分遅れたからCのETAに3分足す」だけなら10時31分となり、残り区間も遅くなる影響を反映できません。ただし、A→Bの平均GSをそのまま次区間へ使えるかは別に検討します。経路方向が変わる、風が違う、上昇中だった、といった条件があれば再計算が必要です。
この例ではA・Bの位置と通過時刻が正しいことが前提です。別の橋をBと誤認したなら、距離18 NMという入力から崩れます。「計算が合った」という事実だけで、位置確認の正しさを証明することはできません。
5.時間のずれから原因を一つに決めない
予定より遅れた理由は、向かい風の増加だけではありません。TASの違い、迂回、旋回、区間の起点を記録した時刻の誤り、目標物の取り違えでも時間が変わります。まず、飛行した区間と記録の条件を確かめます。
例えば直線区間18 NMを「通過から通過まで」測った値と、離陸時刻からBまでを測った値は同じ意味ではありません。出発後の上昇や経路への合流を含むなら、単純な巡航GSの評価には使えません。計画時から区間の始点と終点を明確にしておきます。
燃料についても、単に時間差に巡航消費率を掛けて終わりにしないようにします。実際の出力、残量、今後の経路、予備や目的地変更の条件を評価します。詳細は燃料計画の基本へつなげて考えてください。
使用する地図やデータの有効日も計画の前提です。新設の構造物、空域の一時的な制限、利用できない施設などは、地図だけでは把握できません。出発前のNOTAM確認と必要な航空情報の収集を済ませ、地上で照合できる情報を飛行中へ持ち越さないようにします。見える地形と地図の違いを、すぐに自分の位置誤りだと断定する必要もありません。
6.位置に自信がないときほど、確認の順序を守る
目標物が見つからないと、似た地形へ飛んで確かめたくなります。しかし、根拠の薄い旋回を重ねるほど、最後に確実だった位置からの予測も難しくなります。まず操縦と見張り、安全な飛行状態を維持し、最後に確実に確認した位置、時刻、飛行方向を整理します。
地図を見たいからと高度を下げたり、雲の下へ無理に進んだりしないことが重要です。使用可能な航法装置、無線支援、訓練・運航上の位置不明時の手順を早めに活用します。地形や空域を無視して「迷ったら必ず上昇する」といった一律の行動へ置き換えることもできません。
練習では、出発前に「次の目標物が見えなかったとき何を照合するか」「計画を見直す判断点はどこか」を教官と話し合います。飛行後は、予定と実績の違いを残したログが、風の見積もり、チェックポイントの選び方、記録の負担を振り返る材料になります。
理解度チェック
- 川の合流点を地図と照合するのは、地文航法と推測航法のどちら?
答え:地文航法です。その位置から時間・速度・方向で次の位置を予測するのが推測航法です。 - 18 NMの区間に15分かかった場合、実測平均GSは?
答え:72 ktです。18÷(15÷60)で求めます。区間の位置と時刻が正しいことが前提です。 - 途中で3分遅れたら、目的地ETAも必ず3分遅れになる?
答え:いいえ。残り区間のGSや経路条件を更新すると、遅れがさらに増減する可能性があります。
参考資料と適用範囲
FAA Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge, Chapter 16:NavigationのPilotage、Dead Reckoning、Flight Planning、Lost Proceduresを参照しました。ログの整理図と時刻計算は独自の学習例です。FAA資料は米国の教育資料であり、日本の運航では最新のAIP Japan、適用法令、当該機のAFM・POH、運航者の手順および教官の指導を優先してください。