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Q1.単純な球形地球の模型で、一方のアンテナの高さが4倍になると、そのアンテナからの地平線距離は約何倍?

答え:2倍

幾何学的な地平線距離は、高さの平方根にほぼ比例します。相手側の高さを含む総見通し距離まで、そのまま2倍になるわけではありません。

本文で確認:3.二つの高さを入れて独自計算する

Q2.地上局の声がよく聞こえるのに、自機からの送信が十分届かないことがあるのはなぜ?

答え:送受信性能や送信所・受信所の位置が異なる場合があるから

一方を受信できても、逆方向の通信が成立する保証にはなりません。出力や感度、アンテナ、施設の位置などの条件が関係します。

本文で確認:4.見通せても、必ず通話できるとは限らない

この2問だけで理解全体や実技能力は判定できません。実際の運航判断には使わず、本文の前提・例外も確認してください。


地上では聞こえにくかった管制機関の声が、上昇すると明瞭になることがあります。VHF航空無線は、基本的にアンテナどうしの見通しが重要な通信です。距離だけでなく、高度、地形、アンテナの位置、装置の状態を合わせて考えると、通信範囲のイメージをつかめます。

この記事は電波の性質を理解する教材です。計算値は実際の通信可能範囲、管制サービスの範囲、上昇を行う許可を示しません。実運航では最新の・航空図、機器取扱説明書、承認されたAFM・POH、運航者の手順と教官の指導に従ってください。

1.見通しは地図上の距離だけでは決まらない

VHFは超短波と呼ばれる周波数帯です。航空の音声通信で使われる電波は、通常、送受信アンテナ間のほぼ見通せる経路を中心に伝わります。山の向こうへ自由に回り込んだり、地球の裏側まで地表に沿って届いたりすることを前提にはできません。

送信側の電波が受信側に十分な強さで届けば音声を取り出せますが、途中に山がある、地球の丸みで相手が隠れる、機体の一部がアンテナを遮る、といった条件で信号が弱くなります。「空港から50 NM以内」という円だけでは通信品質を説明できない理由です。

見通しといっても、人間の目でアンテナを識別できる必要はありません。幾何学的な遮りが小さいかを考える言葉です。実際の電波は屈折、反射、回折などの影響も受けるので、光の直線だけで完全に決まるわけでもありません。

2.地球の丸みとアンテナの高さ

障害物のない球形の地球を仮定すると、高い場所ほど地平線が遠くなります。地上局のアンテナと航空機のアンテナの両方が高ければ、それぞれから見える地平線までの距離を足した範囲まで、幾何学的な見通しが得られます。

地球半径を約6,371 kmとし、アンテナの高さが地球半径より十分小さい場合、幾何学的な見通し距離は次の近似で求められます。

距離[km] ≈ 3.57 ×(√航空機側の高さ[m]+√地上局側の高さ[m])

これは直線と円の接線の幾何から得られる教育用の式で、大気の屈折を入れていません。高さは起伏のない基準面からのアンテナの高さを想定します。山地で高度計の海抜高度をそのまま代入し、谷底の局まで届くと判断する用途には使えません。

3.二つの高さを入れて独自計算する

平らな海面を想定し、地上局のアンテナ高を25 m、航空機のアンテナ高を1,000 mとします。平方根は√25=5、√1,000=約31.62なので、距離は3.57×(31.62+5)=約130.7 kmです。1 NM=1.852 kmで換算すると約70.6 NMになります。

航空機側だけを250 mへ下げると、3.57×(15.81+5)=約74.3 km、約40.1 NMです。逆に4,000 mへ上げると、約243.6 km、約131.6 NMになります。高さが4倍でも、航空機側の地平線距離は2倍です。地上局側の高さを含む総距離がそのまま2倍になるわけではありません。

幾何学的な見通し距離の比較:地上局25 m固定
航空機250 m
約74.3 km
約40.1 NM
航空機1,000 m
約130.7 km
約70.6 NM
航空機4,000 m
約243.6 km
約131.6 NM
図1:地球を球形、地表を平らとし、屈折・地形・送受信性能を無視した独自計算。値は運用上の通信保証距離ではありません。

実際には大気による電波の曲がり方を考慮した「電波見通し」の計算も使われます。教材で係数が違う式を見たら、単位がftかmか、距離がNMかkmか、屈折の仮定を入れているかを確認します。異なる前提の式を混ぜてはいけません。

4.見通せても、必ず通話できるとは限らない

十分な信号強度を得られるかは、送信出力、アンテナの性能・向き、配線損失、受信感度、雑音などにも左右されます。幾何学的に届く可能性があっても、聞き取れる音声になるとは限りません。

地上局の大きな送信設備からの声は聞こえるのに、航空機側の送信が相手に十分届かない場合もあります。さらに、同じ管制機関の送信所と受信所が同一地点とは限らず、周波数ごとの使用施設も異なる場合があります。「聞こえる=相手にも確実に聞こえる」という推論はできません。

実際の通信では相手からの応答や必要なを通じて伝達を確かめます。受信の仕組みは航空無線の受信機、やり取りの確認は聞き返しと復唱も参照してください。

5.山、機体姿勢、反射の影響

山の陰に入ると、地図上では近い局でも通信が難しくなることがあります。谷の中から見える空が広くても、目的の地上局への方向だけが尾根に遮られている可能性があります。通信を確認するために、無計画に地形へ近づく行動は避けます。

機体のアンテナは全方向へ完全に均一な感度を持つわけではありません。取付位置や機体構造、姿勢によって受信状態が変わることがあります。ただし旋回中に一時的に聞こえなくなったからといって、原因をアンテナの遮蔽だけに決めつけてはいけません。

地面や建物で反射した電波が直接届く電波と重なると、位置の違いで強め合ったり弱め合ったりすることもあります。これをマルチパスと呼びます。ある地点で良好に聞こえた実績が、周囲一帯の通信を保証するわけではありません。

気温や湿度の鉛直分布によって、通常より遠い局が聞こえる異常伝搬が起きることもあります。珍しく遠距離で受信できても、いつも使える通信経路として飛行計画の根拠にはしません。

6.届かないのか、設定が違うのかを区別する

通信が途切れたら、まず操縦と航法を維持し、機種と運航に定められた手順で確認します。一般的な確認対象には、正しい周波数がアクティブになっているか、音量、送受信機・オーディオパネルの選択、ヘッドセット接続、送信ボタンが押されたままではないかなどがあります。

同一周波数で複数の局が同時に送信すれば、聞き取りにくくなることがあります。地理的な通信範囲と、混信や周波数の占有を別の問題として考えます。無応答を見てすぐ故障と断定せず、反対に機器設定ばかり触って地形による制約を見落とさないようにします。

上昇すれば見通しが改善する場合はありますが、上昇には空域、管制承認、気象、機体性能、障害物などの条件があります。通信回復だけを理由に勝手に高度を変更するという手順にはなりません。通信故障時の具体的な行動は、その地域・飛行方式の手順を事前に確認します。

洋上などVHFの見通しを越える区間では、HFや衛星通信など別の通信手段を組み合わせる場合があります。ただし、どの手段が使えるか、必要かは装備と経路の承認条件によります。VHFを増幅すればどこまでも届く、という発想とは分けて考えます。

7.周波数と通信計画を準備する

飛行前には、公示された周波数、使用する機関、運用時間、経路の通信環境を確認します。管制の周波数を受信できても、そこがその位置の担当機関であるとは限りません。通信設備の範囲と、管制・情報サービスを受けられる範囲も区別します。

山岳や低高度の区間では、どこで交信し、受信できなくなった場合にどの公示手順へ移るかを考えておきます。周波数変更の前後で受信状態が違ったら、地上局の位置や施設の違いも原因候補になります。

デブリーフィングでは、通信が変化した位置・高度・姿勢・周波数を記録すると原因を整理しやすくなります。ただし一回の経験を恒久的な性能限界や独自の運用規則にせず、必要に応じて機器の確認や公示情報との照合につなげます。

理解を確かめる3問

Q1.航空機の高さを4倍にすると、見通し距離も4倍ですか?

違います。単純な球形地球では、一方のアンテナからの地平線距離は高さの平方根にほぼ比例するので2倍です。総距離には相手側の高さも加わります。

Q2.地上局が聞こえれば、自分の送信も届いていますか?

必ずしもそうではありません。送受信性能や施設位置が異なる場合があります。相手の応答を含めて通信成立を確認します。

Q3.計算上70 NM届くなら、その範囲の山地でも確実ですか?

いいえ。例の計算は地形も屈折も機器性能も無視しています。実際の運用に使うのは公示情報と承認された手順です。

参考資料

資料確認日:2026年10月20日。本文の図と数値例は学習用に独自作成しています。