METARの雲量・雲底とシーリング|低い雲があっても「雲底=シーリング」とは限らない
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Q1.架空の雲群「FEW012 SCT018 BKN035」で、シーリングは?
答え:飛行場標高から3,500 ft
最も低い雲はFEW012ですが、記事で扱う定義のシーリングは最も低いBKN・OVC等から読みます。この例ではBKN035です。
Q2.METARに複数層の雲量があるとき、単純に足して全天の雲量にできないのはなぜ?
答え:上下の雲が同じ空の方向に重なることがあるから
各層の雲量は層ごとに推定されます。同じ方向に重なる部分があるため、単純合計は全天の覆われ方を表しません。
この2問だけで理解全体や実技能力は判定できません。実際の運航判断には使わず、本文の前提・例外も確認してください。
METAR飛行場で定時に観測した気象を、決められた形式で伝える通報。観測時刻、風、視程、天気、雲、気温、気圧などから、その時点の状態を読み取る。で FEW012 SCT018 BKN035 と読んだとき、最も低い雲底は1,200 ftです。ではシーリングも1,200 ftでしょうか。この例では違います。雲量と雲底を一緒に読み、最も低いBKNの層を見つけると、シーリングは3,500 ftと読み取れます。
以下の雲群の表記は日本の気象庁の通報式で確認し、「シーリング」の説明にはFAA AIMAeronautical Information Manual。米国FAAが発行する、航空情報や運航手順などをまとめた資料。の定義も参照します。両者の観測・通報上の細部や運航規則がすべて同じという意味ではありません。
この記事は雲のグループだけを取り出して読む練習です。METAR全体の順序はMETARの読み方入門で確認できます。
一つの雲群を二つの情報に分ける
BKN035 は、先頭の BKN が雲量、後ろの 035 が雲底の高さです。雲量は空を8等分して表し、FEWは1~2/8、SCTは3~4/8、BKNは5~7/8、OVCは8/8です。数字3桁は100 ft単位で、035 は飛行場標高から3,500 ftの雲底を示します。雲頂の高さを表す数字ではありません。気象庁・那覇航空測候所「METARとTAF」
| 表記 | 雲量 | 雲底の読み方 |
|---|---|---|
FEW012 | 1~2/8 | 飛行場標高から1,200 ft |
SCT018 | 3~4/8 | 飛行場標高から1,800 ft |
BKN035 | 5~7/8 | 飛行場標高から3,500 ft |
この三つのグループは学習用の架空例です。特定の空港の現在のMETARではありません。図は雲底の上下関係だけを示し、雲が空のどこに重なるか、機体からどう見えるかを描いたものではありません。

日本の気象庁「航空気象通報式」では、雲群は低い層から順に報じます。第1群は最も低い層を雲量に関係なく、第2群はその上の3/8以上の層、第3群はさらに上の5/8以上の層から選びます。重要な対流雲を追加で報じる場合もあります。したがって、表示された三つの層は「空に存在する雲をすべて列挙したもの」とは限りません。
雲量を足し算しない理由
FEW012 SCT018 BKN035 を見て、1~2/8と3~4/8と5~7/8を合計してはいけません。気象庁の通報式では、各層の雲量を、その層以外に雲がないとみなして推定します。上下の雲は同じ空の方向に重なることがあり、別々の層の雲量を足しても全天の雲量にはなりません。気象庁「航空気象通報式」雲量の規則
たとえば、空を模式的に8区画に分け、下層が左の2区画、上層が左の4区画を覆うとします。下層は2/8、上層は4/8ですが、両方を見た空の覆われ方は6/8ではなく4/8です。上層が別の区画に広がれば合計の見え方は変わります。これは重なりを理解するための架空図で、実際の観測計算を再現したものではありません。

なぜFEW012ではなくBKN035なのか
航空気象でいうシーリングは、原則として最も低いBKNまたはOVCの雲層、あるいは空が覆われた場合の鉛直視程に基づきます。FEWやSCTの層には雲があっても、この定義のシーリングにはなりません。上の例ではBKN035が最も低い該当層です。METARに「この層がシーリング」と別記されるわけではなく、雲量を見て読み取ります。FAA AIM 7-1-14、7-1-28
ここで区別したいのは次の三つです。
- 最低雲底:表示された雲群のうち、最も低い雲の底。この例では1,200 ft。
- シーリング:定義に該当する最も低い層の高さ。この例では3,500 ft。
- 自機と雲の距離:機体の位置や雲の広がりによって変わる別の話。METARの雲群だけでは分かりません。
BKN・OVCがない場合
架空の雲群が FEW012 SCT018 だけなら、この報じられた雲群にはBKN・OVCの層がありません。したがって、この二つのコードから「シーリングは1,200 ft」や「1,800 ft」とは言いません。ただし「雲がない」「どの高さにも雲の層がない」「飛行条件を満たす」とも言えません。日本の通報式には報じる雲層の選択基準があり、報告範囲より上の層や周辺の状況は、この二つのコードだけでは分からないためです。
NSC は運航上重要な雲がないこと、NCD は自動観測で雲が検知されないことを表す場合に用いられます。どちらも「大気中に雲が一切ない」という宣言に置き換えないでください。CAVOK にも視程・雲・現在天気を合わせた条件があります。気象庁「航空気象通報式」NSC・NCD・CAVOKの規則
海外の解説を読む際には略号の運用差にも注意します。FAA AIMは米国の手動観測の SKC と、自動観測で12,000 ft未満に雲が報じられない場合の CLR を説明しています。日本の NSC・NCD と同じ条件の語として置き換えず、まず通報した国・機関の規則を確認します。FAA AIMの雲況解説
飛行場からの高さと海抜高度を混ぜない
雲群の 035 は飛行場標高から3,500 ft上という表記です。仮に架空の飛行場の標高が海抜500 ft(500 ft MSL平均海面を表す略語で、標高や高度を測る基準面として使う。高度の数値にMSLとあれば平均海面からの高さを示し、その地点の地面からの高さとは区別する。)なら、その飛行場上空のBKN035の雲底は、基準面をそろえた概念上は海抜約4,000 ftです。3,500 ft MSLではありません。飛行場標高からの高さと海抜高度を同じ数字として比較すると、この例では500 ftのずれを生みます。気象庁・那覇航空測候所の雲底説明、FAA AIMの雲高度の説明
これは単位と基準面を区別するための計算例です。実際の機上の高度計指示、地形との間隔、経路上の雲底をこの足し算だけで判断しません。
架空の経時例:数字と雲量の両方を比べる
同じ架空の飛行場について、09:00 UTCの雲群が FEW012 SCT018 BKN035、10:00 UTCの雲群が FEW008 BKN014 OVC035 だったとします。前者のシーリングは3,500 ft、後者は1,400 ftです。後者では、OVC035より低いBKN014が該当します。
この二つの観測例を比べると、シーリングが低くなったことは読めます。しかし、次の時刻も必ず低下し続けるとは言えません。視程、天気、風、気温・露点、TAF飛行場とその周辺について、指定された有効期間の気象を予想する通報。風、視程、天気、雲とその変化を、飛行する予定時刻に沿って確認する。や周辺の実況も一緒に確認して、変化がどの範囲に及ぶかを考えます。雲量の数値を層ごとに単純に足して全空の雲量を求めることもできません。
VV や CAVOK を見たら
空が霧などで覆われ、雲底を直接示せない場合は、VV006 のように鉛直視程が報じられることがあります。数字は鉛直方向に見通せる距離を示し、「雲の底が600 ftにある」という意味ではありません。日本の通報式は、天空不明で鉛直視程を得られるときにVVを報じるとし、AUTO の場合にはこのVV群を報じないと定めています。気象庁「航空気象通報式」鉛直視程の規則
FAA AIMは、米国のMETARを読む際、VVを不定のシーリングとして説明しています。FAA AIMのMETAR雲況解説 この記事はこの考え方を読解の補助に使いますが、米国の観測・運用上の扱いを日本の飛行基準へそのまま移しません。国内のMETARの表記は気象庁の通報式で確認し、実際の運航判断は適用される日本の正式資料と手順に従ってください。
また、CAVOK や NSC を見たときは、この例のBKN・OVC探しを機械的に当てはめる前に、それぞれの報告条件を確認しましょう。CAVOKと9999・NSCの違いで整理しています。
METARは観測時刻・観測地点の情報です。雲群一つから、経路全体の雲底や空域での雲との間隔、飛行の可否は決められません。実際の飛行では最新の実況・予報、適用される気象最低条件と手順、AFM/POH、教官・運航責任者の判断を確認してください。
読み終えたら二問
架空の雲群 SCT009 OVC024 では、最も低い雲底とシーリングはいくつでしょうか。答え: 最も低い雲底は900 ft、シーリングはOVCの2,400 ftです。「最も低い雲」と「シーリングを作る層」を別々に探すと、読み違いを防げます。
もう一問: 標高500 ft MSLの架空の飛行場で FEW012 SCT018 だけが報じられたら、「シーリング1,200 ft」と言えますか。また、SCT018 の雲底は概念上、海抜何ftですか。答え: FEW・SCTだけからシーリング1,200 ftとは言えません。SCT018の雲底は飛行場標高から1,800 ftなので、海抜では約2,300 ftです。これは基準面をそろえる練習であり、飛行可否の判断ではありません。
参考資料と関連記事
雲群の表記と報告条件は気象庁「航空気象通報式」と那覇航空測候所の解説、シーリングの説明はFAA AIMを参照しました。雲の見た目から空気の動きを考えるには雲の形を空気の動きから考えるも参考になります。