高度計をいつ29.92に切り替える?|日本のQNH適用区域を飛ぶ一便
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Q1.FL200が表すものは?
答え:標準気圧29.92設定で20,000 ftを示す圧力面
Flight Levelは共通の標準気圧を基準にした圧力面です。実際の海面からの高さと常に一致するわけではありません。
Q2.標高300 ftのA空港で適切なQNHを設定した場合、地上の高度計は約何ftを示す?
答え:300 ft
QNHは海面基準の高度を読む設定なので、地上ではその地点の標高付近を示します。
この2問だけで理解全体や実技能力は判定できません。実際の運航判断には使わず、本文の前提・例外も確認してください。
高度計の原理が分かっても、実際の飛行では「今はQNH空港の気圧から求める高度計の設定値。滑走路上で高度計がその標高を示すように規正するために使う。飛行中の表示が実際の高さと常に一致するとは限らない。か、29.92か」「設定を変えた直後の数字をどう読むか」で迷いやすいものです。ここでは日本のQNH適用区域内にある架空のA空港からB空港への一便を追います。圧力と指示の関係は、前編「気圧高度計の仕組み」の擬似高度計で操作できます。
この区域では、14,000 ft未満をQNHでAltitudeとして扱い、14,000 ft以上では標準気圧29.92 inHg(2992)に設定してFlight Level(FL)の基準で扱います。14,000 ftは設定を切り替える目安であり、QNH設定の14,000 ftとFL140の圧力面を同一視しないことが大切です。設定を変えれば、機体が動かなくても指示は変わります。

一便の地図を先に見る
A空港は標高300 ft、出発時のQNHは29.53 inHg。B空港は標高0 ft、到着時のQNHは30.12 inHgとします。地上で実際に測る気圧は、A空港で約29.21 inHg、B空港で30.12 inHgという標準大気に沿った架空の例です。QNHはその圧力を海面基準へ換算して高度計に入れる値です。
| 場面 | 高度計の設定 | 数字の読み方 |
|---|---|---|
| ① A空港で出発 | A空港のQNH 29.53 | Altitude。地上では約300 ft |
| ② 上昇して14,000 ftに近づく | QNHからSTD 29.92へ | 以後、FLの基準で扱う |
| ③ 上空を飛行 | STD 29.92(2992) | 全機で共通の圧力基準 |
| ④ 降下してQNHで14,000 ftとなる付近 | STDからB空港側のQNHへ | 以後、Altitudeで扱う |
| ⑤ B空港に着陸 | B空港のQNH 30.12 | 地上では約0 ft |
① 出発地ではQNHで「空港の標高」を確かめる
A空港で適切なQNH 29.53 inHgを設定すると、標高300 ftの基準地点にいる高度計は約300 ftを示します。0 ftでないのが正常です。QNHは、海面基準の高度を読むための設定だからです。地上の既知の標高との照合は、高度計の異常や設定間違いに気づく手掛かりにもなります。
この設定のまま出発し、14,000 ft未満では垂直位置をAltitudeで扱います。高度計の数字は、適用される方式や管制指示にある海面基準の高度と対応します。
② 上昇中、14,000 ft付近で29.92へ切り替える
上昇してQNH指示が14,000 ftに近づいたとき、または通過するときに標準気圧29.92 inHgへ切り替える、というのが日本のQNH適用区域での基本の見方です。A空港のQNH 29.53から29.92へは設定値を上げるので、切替時には機体の動きとは別に高度計の指示が上がります。
このため、QNHで読んだ「Altitude 14,000 ft」が、切替後も表示14,000 ftのままとは限りません。FLは標準気圧設定の圧力面です。例えばFL200は、29.92設定の高度計が20,000 ftを示す圧力面を指します。
③ 上空ではSTDで、互いの高さを同じ物差しで扱う
A空港のQNHは29.53、B空港のQNHは30.12。同じ瞬間に二機が別々のQNHを使っていると、数字だけでは同じ圧力面にいるか比べにくくなります。29.92へそろえると、同じFlight Levelは同じ基準の圧力面を指します。
ただし、29.92に設定したからといって、大気が標準大気に変わるわけではありません。FL200は「実際に海面から20,000 ft」という意味ではありません。
④ 降下中、到着地側のQNHへ戻す
降下では、到着地側のQNHに合わせたときに14,000 ftを指すタイミングで、29.92からQNHへ切り替えると整理できます。切替前のSTD指示が14,000 ftになったらという意味ではありません。設定値が違えば、同じ場所での指示も違うからです。
この例ではSTD 29.92からB空港側のQNH 30.12へ設定値を上げるので、切替に伴う指示は上がります。実際には降下中でも、設定の効果だけを取り出せば上向きです。だから、切替後の数字は「いまどの設定で表示しているか」とセットで読みます。
⑤ 進入と着陸では、B空港の標高に戻る
B空港側のQNHを設定したら、適用される進入方式の高度や管制指示をAltitudeとして読みます。標高0 ftのB空港に着陸した高度計は約0 ftを示します。A空港では約300 ftを示したのと同じく、QNH設定では着陸地点の標高を読むからです。Bで0 ftになるのは、Bの標高を0 ftと置いたためです。
A空港の29.53を覚え続ける必要はありません。大事なのは、その場所と時刻に適した設定値を得て、現在使う基準を間違えないことです。
14,000 ft未満でも29.92を使う洋上がある
ここまでの14,000 ftの境目は、日本のQNH適用区域内を想定しています。QNH適用区域境界線の外側の洋上管制区などでは、14,000 ft未満でも標準気圧29.92 inHgを使う扱いがあります。海の上なら一律に切り替えるという意味ではなく、適用区域の境界と飛行する空域をAIP各国が発行する航空路誌。運航に必要な恒久的な施設・空域・手続きなどの情報を収録する。利用時は改訂と補足版、関連するNOTAMも確認する。で確認します。
一方、QNH適用区域内で14,000 ft未満を飛ぶなら、適切な地域のQNHを使い、必要に応じて更新しながらAltitudeで扱います。出発地のQNHを目的地まで固定するわけではありません。高い気圧の地域から低い気圧の地域へ移って設定を更新しなければ、実際の機体は指示より低い方向にずれます。
QNEを「切替操作の名前」と覚えなくてよい
FAAの用語集ではQNEを標準設定に使う気圧と説明します。一方、英国CAAでは、標準気圧に設定した高度計の着陸時の指示をQNEと呼ぶ使い方があります。[5][6] この一便を理解するには、まずQNH → 29.92(STD)→ QNHの流れと、Altitude → Flight Level → Altitudeの読み替えをつかめば十分です。QNEの意味は、参照する教材や運航手順の定義に合わせて確認します。
実習:羽田のATISでQNHを探してみる
羽田空港(RJTT)のATISAutomatic Terminal Information Service。空港周辺の気象や運用に関する情報を、繰り返し放送する仕組み。を確認できる環境なら、情報符号と発表時刻、高度計規正値(QNH)を控えてください。公開閲覧先の一例はATIS VIEWです。RJTTで検索できますが、第三者による学習用の閲覧先であり、実運航の情報源としては使いません。ATISを確認できない場合は、東京航空地方気象台が示す過去の羽田METAR例にあるQNH 29.97 inHgで同じ操作を試せます。METAR飛行場で定時に観測した気象を、決められた形式で伝える通報。観測時刻、風、視程、天気、雲、気温、気圧などから、その時点の状態を読み取る。はATISとは別の通報です。[7]
- ATISのQNHをinHgで読み取ります。例えば「A3006」は30.06 inHgです。観測値は変わるので、記事中に固定の「現在のQNH」は置きません。
- 前編の擬似高度計でA空港を選び、機体は駐機位置のまま。「気象条件」に調べたQNHを入力します。A空港は羽田を再現した空港ではありませんが、気象側の値を入れる練習ができます。高度計の設定値はまだ変えず、地上の気圧・静圧・指示がどう動くか見ます。
- 「QNH」ボタンを押して高度計の設定を新しい値に合わせます。指示がA空港の標高約300 ftへ戻ることを確かめてください。
ここで高度計に設定するのは気圧高度標準気圧面を基準に、測定した気圧を標準大気の高度へ換算した値。高度計を29.92 inHgに規正して読み取り、航空機の性能計算などに用いる。そのものではなく、ATISから得たQNHという気圧設定値です。実際の飛行では、適用される最新の情報と手順で設定します。
一分で確認+場面問題
まず自分の言葉で答えてから、「答えと解説を見る」を開いてください。
Q1:地上のA空港でQNHを合わせたら、なぜ約300 ft?
答えと解説を見る(Q1)
海面基準で読む設定なので、空港の標高を示すからです。
Q2:STDに切り替えた瞬間、指示が上がった。機体が上昇した?
答えと解説を見る(Q2)
その指示変化だけでは言えません。基準を変えた効果が含まれます。
Q3:14,000 ft未満なら、どの洋上でもQNH?
答えと解説を見る(Q3)
違います。QNH適用区域境界線の外側では、29.92を使う空域があります。
Q4:場面問題:A空港の駐機位置で、周囲の気圧も機体の位置も変わらないまま、設定を29.53から29.92 inHgへ上げました。指示はどうなる? 機体は上昇した?
答えと解説を見る(Q4)
指示は上がりますが、機体は上昇していません。同じ静圧でも、設定値を上げると高度計の指示は上がります。これは基準を変えた効果です。QNH設定のAltitudeと、標準気圧設定の圧力高度を区別して読みます。ここでは切替時期や操作手順を問うていません。
覚える順番:今どの段階か → どの気圧を設定しているか → 表示をAltitudeかFlight Levelのどちらとして読むか。
参考資料
- 国土交通省 航空従事者技能証明学科試験例題集、例題12(14,000 ftでの上昇・降下時の規正)
- FAA AIM 7-2(地上での高度計照合、高気圧から低気圧への移動。米国の具体的な規正高度は本例に適用しない)
- FAA Pilot/Controller Glossary, Flight Level(標準設定とFL)
- 国土交通省 航空従事者学科試験問題(QNH適用区域外の洋上での標準気圧)
- FAA Pilot/Controller Glossary, Q(QNEの定義)
- UK CAA CAP 413, 6.69(QNEの別の用法)
- 東京航空地方気象台 羽田空港 WEATHER TOPICS 第54号(QNHとMETARのA四桁表記)