ピトー静圧系|速度計・高度計・昇降計の関係
読む前に、2問でポイントを確認
予習・復習の目安です。解答は任意で、記録・送信しません。
2問で確かめる(任意・約1分)
各問題を開くと答えと解説を確認できます。自動採点にはJavaScriptが必要です。
Q1.一般的なピトー静圧系で、速度計が使う圧力の組合せは?
答え:全圧と静圧の差
ピトー管からの全圧には静圧の成分も含まれます。速度計は両者の差を速度に換算します。
Q2.一般的な機械式VSIが、上昇・降下率を得るために利用するのは?
答え:静圧がすぐ伝わる側と遅れて伝わる側の圧力差
静圧の伝わる速さに差を設けることで、静圧の時間変化を昇降率として表示します。
この2問だけで理解全体や実技能力は判定できません。実際の運航判断には使わず、本文の前提・例外も確認してください。
速度計・高度計・昇降計は、それぞれ違う数字を示します。しかし、入力をたどると共通するのは「空気の圧力」です。とくに静圧は3つすべてに関係します。ここを押さえると、計器の仕組みだけでなく、閉塞時に指示が食い違う理由も整理できます。
この記事では、一般的な訓練機のピトー静圧系をモデルに、圧力の通り道を説明します。高度計規正値の使い分けは高度計・QNH・標準気圧の記事を参照し、ここでは、どの圧力を、何と比較しているかに注目してください。実機の操作・異常時対応は、承認されたAFM、当該機のPOH、適用されるチェックリストと教官の指導を優先します。
静圧・全圧・動圧を区別する
静圧:その場所の空気が持つ圧力
静圧は周囲の大気圧です。「静」という字でも、飛行中になくなるわけではありません。通常、上昇すると周囲の静圧は下がり、降下すると上がります。機体の静圧孔は、飛行による流れの影響をできるだけ小さくして、この圧力を取り込む位置に設けられています。ただし、取付位置や姿勢などによる誤差を完全になくせるわけではありません。
全圧:ピトー管から取り込む圧力
機首方向を向くピトー管の入口では、流れがせき止められ、全圧が取り出されます。初学者向けには、低速で圧縮性を無視できる条件で「全圧=静圧+動圧空気の流れが持つ運動に対応する圧力。q=1/2ρV²で表し、空気密度が同じなら速度の二乗に比例する。」と整理すると分かりやすくなります。ピトー管から速度計へ届くものを「動圧だけ」と覚えないことが大切です。
動圧:速度計が圧力差から取り出すもの
この近似では、動圧は空気密度と対気速度の二乗に関係します。同じ空気密度なら、対気速度が2倍になると動圧は4倍です。速度計は全圧から静圧を差し引いた圧力差を、速度の目盛りに置き換えます。高速域では圧縮性の扱いが必要なので、この単純な式をあらゆる飛行条件へそのまま広げないでください。
ここで対象となるのは空気に対する速さです。GPSで得る対地速度とは異なり、速度計の指示をそのまま真対気速度とみなすこともできません。今回はIAS・CAS・TASの換算より、その手前にある圧力の関係を押さえましょう。
3つの計器への配管を一枚で整理する
| 計器 | 受け取る圧力 | 何を読み取るか |
|---|---|---|
| 速度計(ASI) | 全圧と静圧 | 両者の差を速度に換算 |
| 高度計 | 静圧 | 静圧を規正値・標準大気の関係に基づいて高度に換算 |
| 昇降計(VSI) | 静圧 | 静圧の時間変化を上昇・降下率に換算 |
圧力の通り道
ピトー管 → 全圧の配管 → 速度計
静圧孔 → 静圧の配管 → 速度計・高度計・昇降計
静圧孔とピトー管が別々に配置される機体も、プローブにまとめられる機体もあります。この図は外形ではなく、入力の関係を表しています。また、実機には複数の静圧孔や独立した系統があり、図の1本の線がそのまま機体全体の構成とは限りません。
高度計と昇降計は、同じ静圧を別の方法で使う
一般的な機械式高度計では、内部の密閉された空盒と周囲の静圧との関係を利用します。上昇して静圧が下がると空盒が膨らみ、その動きが高度の指示になります。高度計は、地面までの距離を直接測る装置ではありません。
一方、一般的な機械式VSIでは、同じ静圧を「すぐ伝える側」と「絞りを通して遅れて伝える側」に分けます。上昇・降下で静圧が変わると両側に一時的な差が生まれ、その差から変化率を示します。一定の率で上昇を続ければ、絞りによって圧力差が維持され、上昇率の指示が続きます。
たとえば水平飛行から上昇に移ると、高度計は高度の増加を示し始め、VSIも遅れを伴って上昇率を示します。新しい高度で水平飛行に移ると、高度計はその高度を示し、VSIは内部の圧力が落ち着くにつれてゼロへ戻ります。高い場所にいることと、上昇していることは別の情報です。応答の速さは計器方式によって異なります。
閉塞は「どこに圧力が閉じ込められたか」で考える
以下は漏れや温度変化などを無視した、一般的な機械式系統の完全閉塞モデルです。静圧閉塞は、計器に通じる静圧源がすべて失われた状態を想定します。複数ある静圧孔の1つが塞がれただけの場合や、部分閉塞・漏れでは、同じ指示になるとは限りません。
| 閉塞条件 | 速度計 | 高度計・VSI |
|---|---|---|
| ピトー入口のみ閉塞。排水孔と静圧源は開通 | 圧力が排水孔から抜け、概ねゼロへ向かう | 静圧が正常なら、この閉塞による直接の影響なし |
| ピトー入口・排水孔とも閉塞。静圧源は開通 | 全圧側が閉じ込められる。高度一定なら加減速を反映せず、上昇で指示増加、降下で指示減少 | 静圧が正常なら、この閉塞による直接の影響なし |
| 静圧源が閉塞。ピトー系は正常 | 閉塞時の高度より上では正常時より低く、下では正常時より高く指示 | 高度計は閉塞時の指示付近で止まる。VSIは過渡的な変化が収まるとゼロ |
ピトー系が密閉されると、なぜ上昇で速度指示が増える?
速度計の全圧側には、閉塞時の圧力が残ります。その後に上昇すると、正常な静圧源から届く圧力だけが下がります。すると「閉じ込められた全圧−現在の静圧」が大きくなり、加速していなくても速度指示が増えます。「速度計が高度計のように動く」という説明は、この方向の変化を指します。速度目盛りから高度を読めるという意味ではありません。
静圧源の閉塞では、なぜ逆向きの誤差になる?
静圧側が閉塞すると、引き算に使う基準が更新されません。閉塞した高度より上では、閉じ込められた静圧は現在の外気静圧より高いため、速度計は差を小さく見積もります。逆に下では差を大きく見積もります。
たとえば3,000 ft付近で静圧系が閉塞し、その後上昇したとします。高度計が3,000 ft付近に留まり、VSIがゼロを示しても、実際に水平飛行を続けている証拠にはなりません。また表の速度誤差は、その時の飛行状態で正常な系統が示す値との比較です。実際の加減速も重なるので、針が必ず一定の方向へ動き続けるという意味ではありません。
全圧側も静圧側も密閉されれば、両側の圧力差まで閉じ込められます。速度指示はゼロになるとは限らず、閉塞時の値付近に残ることがあります。故障した計器がもっともらしい数字を示し続ける点にも注意が必要です。
電子計器と代替静圧源でも、入力を確認する
グラスコックピットでは、ADC(エア・データ・コンピューター)が圧力を処理して表示器へ送る構成が一般的です。画面が電子式になっても、ピトー静圧の入力が必要なことは変わりません。複数の表示が一致していても、同じ圧力源やADCを共有していれば、独立した裏づけにはなりません。実際の故障表示・比較機能・代替データ源は機種と装備によって異なります。
代替静圧源を備える機体では、切替後の圧力が外部の正常な静圧と一致するとは限りません。たとえば客室内の圧力が外気より低い構成なら、高度・速度の指示が高めになり、VSIが一時的に上昇を示すことがあります。ただし、客室内の状態や換気、機体構造などによって条件が変わるため、この傾向を全機種共通の補正として使ってはいけません。切替操作、条件、補正値は当該機の資料で確認します。
飛行前は、定められた点検に従ってカバーの取り外し、開口部の閉塞・損傷などを確認します。穴を器具で突いたり、自己判断で息や圧縮空気を吹き込んだりすると、計器を損傷するおそれがあります。飛行中の疑わしい指示は、単独の数字に合わせて操作するのではなく、飛行を維持しながら適用される手順で評価します。本記事の閉塞表は診断確定表でも、復旧チェックリストでもありません。
理解度チェック:理由まで説明できる?
- 速度計だけが全圧と静圧の両方を必要とするのはなぜ?
答え:全圧には静圧の成分も含まれるためです。両者の差を取って、対気速度に対応する圧力差を求めます。 - ピトー入口が塞がれたら、速度計は必ず上昇で増加する?
答え:いいえ。排水孔が開いていれば圧力が抜け、概ねゼロへ向かいます。全圧側が密閉され、静圧が正常に伝わる条件で、上昇による指示増加が起こります。 - 高度計が一定でVSIがゼロなら、水平飛行と判断してよい?
答え:それだけでは判断できません。静圧系の閉塞でも両方が同じような表示になります。共通する入力と、当該機で利用できる独立した情報を確認する必要があります。
覚える軸は3つです。速度計は圧力差、高度計は静圧、昇降計は静圧の時間変化。閉塞問題では、まず全圧と静圧の通り道を描き、更新される側と閉じ込められる側を分けて考えると、丸暗記に頼らず整理できます。
参考資料
- FAA, Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge, Chapter 8: Flight Instruments:ピトー静圧系、VSI、閉塞、電子計器の原理(本文ページ8-1〜8-3、8-7〜8-8、8-10〜8-14)。
- FAA, Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge 公式配布ページ。