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Q1.偏差(variation)と自差(deviation)の正しい組合せは?

答え:偏差は真北と磁北の差、自差は機体の磁場によるずれ

偏差は地点の方位基準の差、自差は機体内の磁気的影響です。適用する航空図と機体の補正表を区別します。

本文で確認:3.自差は、機体の中の磁場が作るずれ

Q2.北半球で東または西を向く一般的な液体式磁気コンパスは、加速時にどちらへ向いたように示す?

答え:北

北半球の東西向きでは、加速で北、減速で南への一時的表示が生じます。実際の旋回とは限らず、南半球では逆です。

本文で確認:5.磁気伏角が、運動中の誤差につながる

この2問だけで理解全体や実技能力は判定できません。実際の運航判断には使わず、本文の前提・例外も確認してください。


磁気コンパスは電源に依存しないものが多く、重要な基準になります。しかし、いつ見てもその瞬間の機首方位を正確に示すわけではありません。「北を指すから単純」と考えるより、地球の磁場、機体自身の磁場、機体の運動を分けると誤差が理解しやすくなります。

目標は、偏差と自差の違い、北半球での代表的な加速・旋回誤差、方位を換算する手順を説明できることです。主に一般的な液体式磁気コンパスを扱います。FAA資料は米国の教育資料であり、日本では現行 Japan・法令、承認AFM、当該機のPOH・運航手順と教官の指導を優先してください。

1.まず「どの北から測った方向か」を決める

真方位は地理的な北である真北を基準に、磁方位はその場所の磁北を基準に測る方向です。コンパス方位は機体に取り付けたコンパスの指示を基準にした方向で、機体内の磁気的な影響が含まれます。同じ「090°」でも、基準が違えば同じ向きとは限りません。

さらに、針路は進もうとする経路の方向、機首方位は機首が向く方向です。横風があれば両者は異なります。地図で真針路を読み、そのままコンパスで飛ぼうとすると、偏差・自差だけでなく風の修正も抜ける可能性があります。今回は混乱を避けるため、数値例を「風の修正を終えた真機首方位」から始めます。

無線、航法表示、気象資料で方向を扱うときも、数字だけを拾わず基準を確かめましょう。VORのラジアルとFROM・TOを学ぶ際も、方位・針路・局からの方向を区別する姿勢が役立ちます。

2.偏差は、真北と磁北の違い

偏差(variation)は、その場所での真北と磁北の角度差です。東偏・西偏の向きと大きさがあり、地域によって変わり、時間とともに変化します。したがって、昔覚えた地元の数値や、別地域の教材の例を現在の計画へ流用できません。適用する航空図などの最新資料を使います。

真から磁へ換算するとき、東偏を引き、西偏を足す形で整理できます。ただし、語呂だけで覚えると逆方向の変換で誤りやすくなります。図で磁北が真北のどちら側にあるか考え、何を基準に何を求めるのか書いてから計算してください。

偏差はコンパスの製品不良でも、機内で直せる調整誤差でもありません。ある地点で真北と磁北が違うという基準の問題です。「計器を調整すれば偏差をゼロにできる」と考えないことが大切です。

たとえば偏差を仮に7°Wとする地点では、磁北は真北より西へ7°ずれています。真東を向いた線を磁北から時計回りに測れば、直角90°にその7°が加わるため97°です。この幾何的な関係を一度描いておくと、「西だから引く」と直感だけで逆算してしまう誤りを防げます。

3.自差は、機体の中の磁場が作るずれ

自差(deviation)は、磁化した部品や電流が作る磁場などによって生じるコンパスのずれです。機首方位によって影響が変わるため、「この機体はいつも2°足す」と一つの数字で覚えることはできません。

整備で行うコンパスの調整後も残るずれは、通常、補正表に示されます。表が「この磁方位を飛ぶには、このコンパス指示にする」という形式なら、その見出しの意味に従って読みます。数値の差だけを抜き出して、さらに自差を二重に足し引きしないようにします。

機器の追加や磁性物の置き方、電気装備の状態によって指示が影響を受ける可能性もあります。スマートフォンやヘッドセットなどを近づけた状態を、正常な基準にしてはいけません。装備変更後の点検や補正表の取扱いは整備・運航上の規定に従い、操縦者が自己流で調整するものではありません。

4.換算例:符号よりも、基準を見失わない

風の修正を済ませた真機首方位が090°、使用地点の偏差を仮に7°Wとします。真から磁へは西偏を足すので、磁機首方位は097°です。次に、仮想の補正表に「磁方位097°に対してコンパス指示095°」と示されていれば、読むべき指示は095°となります。

図:方向の基準を一段ずつ変える計算例
真機首方位
090°
風修正は完了済み
西偏7°を加える ↓
磁機首方位
097°
仮想補正表を読む ↓
コンパス指示
095°

偏差も補正表も説明用の仮定です。実在地点・実機の値ではありません。

逆算すると、コンパス095°が表によって磁097°に対応し、そこから西偏7°を引けば真090°へ戻ります。この往復で一致するかを確かめると、符号間違いを見つけやすくなります。角度が360°を越える場合や0°未満になる場合は、360°を単位に整理します。

この計算は定常状態での基準変換です。次に説明する加速・旋回中の一時的な誤差を、同じ補正表で消せるわけではありません。「静かな状態のずれ」と「運動中だけのずれ」を別の箱に入れて考えます。

5.磁気伏角が、運動中の誤差につながる

地球の磁場は地表と常に平行ではなく、上下方向の成分を持ちます。水平面との傾きを磁気伏角と呼びます。コンパスの磁石・カードの組立ては、その影響と慣性を受けるため、加減速やバンクで傾くと、実際の機首方位変化とは違う表示が現れます。

北半球で東または西へ向いている一般的な液体式コンパスでは、加速すると北へ、減速すると南へ向いたような一時的表示が出ます。ANDSという覚え方はこの条件をまとめたものです。南半球では向きが逆になるため、地球全体で通用する語呂ではありません。

たとえば機首を東に保ったまま加速して、コンパスが090°から小さい値側へ動いたとします。それだけで機体が北へ旋回したと判断すると、存在しない旋回を修正しようとしてしまいます。速度が安定して表示が落ち着くことと、他の適切な情報を合わせて読みます。誤差の角度は一定ではないので、例に固定の補正量は置きません。

6.旋回誤差は「北で遅れ、南で進む」を条件つきで理解する

北半球で北向きから旋回を始めると、コンパスは初めに逆向きの旋回を示すことがあり、その後も実際の方位変化に遅れる傾向があります。南向きからの旋回では実際の変化より進んで示す傾向があります。東西付近ではこの旋回誤差が小さくなります。

北または南へ向けて旋回を終える訓練では、こうした遅れ・進みを考慮します。ただし「何度手前で止める」という数字は、緯度、バンク、機器の特性や訓練条件によって変わります。語呂を実機の一律操作に置き換えず、教官と当該機で確認する内容です。

資料で「先行・遅れ」を読むときは、コンパスカード自体の運動を述べているのか、操縦者が読む方位指示を述べているのかにも注意してください。旋回の開始方位、方向、表示と実際のどちらを比較するかを明示すると、文章だけの暗記による逆転を避けられます。

磁気伏角の大きさと、磁北を水平方向に示す力の強さも同じではありません。磁極に近づくと水平成分が弱まり、コンパスを航法の基準として使いにくくなります。反対に磁気赤道付近では伏角に由来する誤差は小さくなりますが、自差や読み取り誤差までなくなるわけではありません。地域の特徴を一つの「コンパス精度」でまとめないようにします。

7.機械式方位計との照合も、安定条件が大事

独立した機械式方位計は、磁気コンパスより読みやすい一方、時間とともにずれることがあります。照合する場面でコンパス自体が加速・旋回誤差を受けていれば、その一時的な誤差を方位計へ写してしまいます。規定された安定条件と方法で扱う必要があります。

読み取り時には視差、揺れ、液体やカードの状態といった別の問題もあります。数字が読みやすいことと、基準として正しいことは別です。整備で扱うべき異常を、偏差や自差の計算だけで説明しようとしないでください。

電子式方位、GPSの対地針路、磁気コンパスは同じ情報ではありません。横風なら機首と進行方向が違うため、表示差だけで故障と断定できません。IAS・TAS・GSの違いと同様に、基準と測定対象を最初に確認しましょう。

理解度チェック

  1. 偏差と自差は、どちらも機体の補正表で直しますか?
    答え:いいえ。偏差は地点の真北と磁北の差で、適用する航空図などから求めます。自差は機体の磁場によるずれで、当該機の補正表を使います。
  2. 北半球で東向きに加速し、指示が北側へ動いたら必ず旋回していますか?
    答え:いいえ。加速誤差の可能性があります。機体の運動とコンパスの一時的な表示を区別します。
  3. 真090°、偏差7°W、磁097°に対する表の指示が095°なら、目標指示は?
    答え:095°です。磁097°を求めたあと、補正表の指示を使います。さらに同じ自差を足す必要はありません。

参考資料